【住宅購入を考えているなら知っておきたい】金利上昇と建築業界の話【価格やローンへの影響は?】

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金利が上がると、家づくりはどうなる?建築業界への影響とマイホーム計画

最近、「マイナス金利が終わった」「金利のある世界へ」といったニュースをよく見かけます。
この「金利が上がる」という動き、実はこれから家を買おうと考えている私たちにも無関係ではありません。
家を建てる建築業界に、じわじわと影響が出始めている状況です。

「金利が上がると、住宅ローン以外にはどんな影響があるのだろう?」
「もしかして、建築費ももっと上がるのかな?」
「そもそも、ちゃんと家は建つの?」なんて、
ちょっと心配になっている方もいらっしゃるかもしれません。

マイホームは大きな買い物ですから、
後で「こんなはずじゃなかった…」とならないためにも、
今の状況を知っておくことは大切です。

金利の上昇が建築業界にどう影響して、それが私たちの家づくりにどう関わってくるのか、そのあたりを少し掘り下げてみましょう。

この記事では、これから家を買いたいと考えている方に向けて、金利上昇が建築業界に及ぼす主な影響を、なるべく分かりやすくお伝えできればと思います。
ポイントは大きく5つです。

  1. 気になる住宅ローン金利と、みんなの購入意欲は?
  2. 新しい家は減ってる?着工件数の話
  3. 材料費はまだ高い?資材価格のこと
  4. 町の工務店は大丈夫?建設会社の経営状況
  5. 家以外への影響(お店や公共工事など)

これらの点を頭に入れておくと、今の時代の家づくり計画に役立つはずです。

まず気になるのは住宅ローン… 金利はじわじわ上昇?家計への影響は

金利が上がる、と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、やっぱり住宅ローンのことではないでしょうか。特に、変動金利を選んでいる、あるいはこれから選ぼうとしている方にとっては、気がかりな点だと思います。

変動金利、これからどうなる?

変動金利タイプの住宅ローンは、世の中の金利の動きに合わせて、返済額が変わる可能性があるものです。日銀が金利を動かすと、銀行が企業にお金を貸すときの金利(短期プライムレート)も動き、それが住宅ローンの変動金利にも反映される、という仕組みになっています。すでに一部の銀行では、金利を引き上げる動きも出てきています。

数字で見ると、こんな違いが…

もし金利が上がったら、毎月の返済はどれくらい変わるのでしょうか?ちょっと試算してみましょう。例えば、3,000万円を35年で返す場合…

  • 金利が0.5%なら、月の返済は約7.8万円。
  • もし金利が1.0%になったら、月約8.5万円(約7千円アップ)。
  • もし金利が1.5%になったら、月約9.2万円(約1.4万円アップ)。
    • ※これは簡単な計算例です。

わずかな差に見えても、35年という長い期間で考えると、支払う総額には結構な違いが出てくるわけです。

「今は待つべき?」購入をためらう気持ち

こうした返済の負担が増えるかもしれない、という見通しや、これからもっと金利が上がるんじゃないか、という不安は、人々の「家を買いたい」という気持ちにも影響します。「今は買うタイミングじゃないかも…」「もう少し様子を見てから決めようかな」と、購入を少し控えたり、計画を見直したりする人が増えるかもしれません。特に、予算にあまり余裕がない場合、金利の上昇が購入を諦めるきっかけになることも考えられます。

「家、建つのかな?」「高くなる?」着工数と材料費、ダブルの影響

金利上昇の影響は、住宅ローンだけにとどまりません。
実際に新しく建てられる家の数(着工件数)や、家を建てるための材料費(資材価格)にも関わってきます。この二つが、家づくりにダブルで影響している状況と言えるでしょう。

新しい家、ちょっと減り気味?

住宅ローンの返済負担が増えそうなことや、建築コストが高いままであることから、新しい家を建てようという動きは、少し鈍くなっているようです。ある調査機関の予測では、2025年度に建てられる家の数は、全体として少し減るだろうと見られています。

  • 自分で住むために建てる「持家」は、減る傾向が続きそう。
  • 賃貸アパートなどの「貸家」も、少し減るかも。
  • マンションや建売の「分譲住宅」は、マンション需要に支えられて全体では横ばいですが、戸建ては少し元気がないようです。

「家を建てたい」気持ちはあっても、金利やコストの問題で、なかなか踏み出せない人が増えているのかもしれません。

材料費はまだ高い… 金利上昇と重なると?

木材や鉄骨、セメント、ガラス…。家を建てるのに必要な材料の値段が、ここ数年、高いままだという話はよく聞きます。世界的な需要増や円安、燃料費アップなどが原因です。データによっては、2021年の初めと比べて、材料費全体が3割以上も上がっているという話もあります。

ここに、金利の上昇が加わってきます。家を建てる会社からすると、

  • 「材料を仕入れるのにお金がかかる」
  • 「事業のためにお金を借りる金利も高くなる」 という、二重の負担になっているわけです。

これって、家の値段にどう響くの?

この「材料費の高さ」と「金利上昇によるコスト増」は、結局のところ、私たちが買う家の値段に反映される可能性があります。すでに新築の家の価格は上がり気味ですが、この状況が続けば、建築コストの上昇分が価格に乗せられて、家の値段がさらに上がったり、なかなか下がらなかったりする可能性は十分に考えられます。

町の工務店は大丈夫?建設会社の経営と資金繰りの話

私たちが家を買うときにはあまり意識しないかもしれませんが、金利の上昇は、実際に家を建ててくれる建設会社の経営にも影響を与えています。
特に、地元で頑張っている中小の工務店さんなどにとっては、ちょっと厳しい状況になっているかもしれません。

見えないところでコスト増?建設会社の台所事情

多くの建設会社、特に中小規模の会社は、仕事を進めるためのお金(運転資金)や、新しい機械を買うためのお金などを、銀行から借りて賄っています。金利が上がると、その借金の利息の支払いが増えてしまいます。

ただでさえ、材料費が高騰していたり、職人さんが足りなくて人件費が上がっていたりして、建設会社の利益は圧迫されがちです。そこに金利上昇による利息負担が加わると、会社のお金のやりくり(資金繰り)が急に苦しくなる、というケースが出てきているようです。

ちょっと心配な「あきらめ廃業」の話も

ある調査によると、金利がほんの1%上がるだけで、会社の利息負担が年間で数百万円も増え、利益を大きく削ってしまう、という計算もあるそうです。

こうした状況が続くと、十分な利益が出せず、借金の利息を払うのも大変になってしまう会社や、材料高や人手不足、後継者がいないといった問題に耐えきれず、「もうこれ以上続けていくのは難しい」と事業をやめてしまう(いわゆる**「あきらめ型倒産・廃業」**)会社が増えるのではないか、という声も聞かれます。

工事の遅れや品質に影響は?

もし、家を建ててくれる会社の経営が苦しくなったり、残念ながら会社がなくなってしまったりすると、私たち家を買う側にも、間接的に影響が出る可能性があります。

  • 工事が予定通りに進まなくなる(下請け会社の問題など)。
  • コストを切り詰めるあまり、見えない部分の品質が心配になる。
  • 家を建てた後、保証や修理をお願いしたくても、会社がなくなっていたら…?

もちろん、ほとんどの会社は誠実に仕事をしていますが、業界全体として、こうしたリスクも少しだけ頭に入れておいた方がいいかもしれません。

オフィスやお店、道路工事も?家以外の分野への影響

金利上昇の影響は、私たちの住む家だけに限りません。
街の風景をつくっているオフィスビルやお店、さらには道路や橋といった公共工事にも、その影響は広がっています。

オフィスビルやお店の建設は?

金利が上がると、企業がお金を借りにくくなるので、新しいオフィスビルを建てたり、ショッピングモールを開発したり、工場を新設したりといった投資を、少し控えようかな、という動きが出やすくなります。

景気の先行きがどうなるか分からない、という雰囲気もあって、

  • 大きな再開発プロジェクトが少し見直されるかも。
  • 新しいお店のオープンが減るかも。
  • オフィスビルの空室が増えるかも。
  • 不動産の価値が少し下がるかも。 といったことが起こるかもしれません。これは、街の賑わいにも関わってくる話でしょう。

公共工事はどうなる?税金との関係も

道路や橋、学校など、私たちの生活に欠かせない公共施設の多くは、国や県、市町村が借金をして建設費用を賄っています。日本はすでにたくさんの借金を抱えているので、金利が上がると、その借金の利息を支払う額が大きく膨らんでしまいます。

国の試算では、金利が1%上がるだけで、数年後には利息の支払いが年間で数兆円も増える、なんて話もあります。この利息は、もちろん私たちの税金から支払われます。

利息の支払いが増えると、

  • 新しい公共工事の計画が立てにくくなる。
  • 今ある計画が見直されたり、規模が小さくなったりする。
  • 将来、税金が上がる原因になるかも…。 なんてことも考えられます。ただ、景気を良くするために、あえて公共工事を増やす、という場合もあります。

建築業界全体の雰囲気は?

このように、金利の上昇は、住宅だけでなく、オフィスやお店、公共工事といった、建築業界のいろいろな分野に影響を与え、業界全体の雰囲気(景況感)を左右します。建築業界の元気は、そこで働く人たちの給料や、関連するたくさんの会社の業績にもつながっているので、日本経済全体の動きを見る上でも、ちょっと気にしておきたいポイントです。

まとめ:金利が上がる時代、家を買う前に考えておきたいこと

さて、ここまで金利上昇が建築業界に与える影響について、いくつかの側面から見てきました。

  • やっぱり気になる住宅ローン金利。返済負担が増える可能性は考えておきたいところです。
  • 新しい家は少し建ちにくくなっているかもしれません。
  • 材料費の高さは続きそうで、金利上昇とダブルで建設会社の負担に。
  • 町の工務店さんも、資金繰りが大変になっている可能性があります
  • 家だけでなく、オフィスや公共工事にも影響は広がっています。

金利の上昇は、建築業界全体にとって、いろいろな課題が重なっている状況を生んでいます。
特にこれから家を買おうと考えている方にとっては、ローンの金利だけでなく、家の値段がどうなるか、信頼できる会社に建ててもらえるか、といった点も気になるところだと思います。

「じゃあ、今は家を買うのは待った方がいいのかな?」と思ってしまうかもしれません。
でも、これまでのような超低金利時代が、むしろ特別な状況だったのかもしれません。
大切なのは、こうしたの中の変化をちゃんと理解して、ご自身の暮らしの計画やお金の計画と照らし合わせ、無理のない範囲で判断することです。

これからの金利がどうなるか、政府がどんな住宅支援策を出すか、といったニュースを気にかけつつ、信頼できる不動産屋さんやお金の専門家(FPなど)に相談してみるのも良いでしょう。
急がず、でも情報はしっかり集めて、じっくり考えることが、この時代の賢い家探しのポイントになりそうです。